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【岩手県】”小売”ではない、 社会課題を解決するユニークな店を目指して

2022.01.28

株式会社薬王堂ホールディングス

常務取締役経営戦略部長 西郷孝一

【岩手県】”小売”ではない、 社会課題を解決するユニークな店を目指して

株式会社薬王堂ホールディングス

常務取締役経営戦略部長 西郷孝一

“小売”ではない、

社会課題を解決するユニークな店を目指して

―岩手県― 株式会社薬王堂ホールディングス

岩手県で創業したドラッグストア薬王堂は、東北6県に356店舗を展開しています(2021年12月現在)。「地域の皆様の美と健康と豊かな暮らしに貢献する」を使命に掲げ、2019年9月にホールディングス制に移行しました。薬王堂が目指すのは、食品や日用品の品揃えが豊富な「小商圏バラエティ型コンビニエンス・ドラッグストア」。人口減などの課題を抱える東北の地で、どのような成長戦略を描いているのか、常務取締役経営戦略部長の西郷孝一さんに伺いました。

「当たり前」のことをするために変化に挑む

――「小商圏バラエティ型コンビニエンス・ドラッグストア」とはどんなお店なのでしょうか。


西郷常務 私たちが店舗を展開している東北地方は、著しい人口減少に見舞われている課題先進地域です。通常、ドラッグストアの商圏は1万人以上と言われていますが、私たちは6,000~7,000人としています。一般より小さい商圏でビジネスを成立させるために、商圏のお客様全員をターゲットにした店づくりと品揃えを目指しています。

具体的には、できるだけたくさんの商品を、低価格で取り扱っています。スーパーマーケットの代わりに食品を、ホームセンターの代わりに衣類や家電製品を、そしてコンビニエンスストアの役割も果たしていこうということです。それが「小商圏バラエティ型」です。これに加えて、皆さんの生活圏に近い場所に出店し、気が向いた時にいつでもふらっと立ち寄れる便利さを目指すということで、「コンビニエンス・ドラッグストア」です。

 

――小さな商圏で商売を成り立たせるカギは何ですか。

西郷常務 通常の6~7割の商圏ですから、売上規模を追求することはできません。大事なのは、販管費などをコントロールして、小さな売上規模でも利益を出せるビジネスにしていることです。

私は薬王堂に入社する前に、日用品の大手メーカーに勤務していたのですが、その会社の働き方は、「あるべき姿」にかなり近いと思っています。そのクリーンな働き方に近づけようと、小売業のマンパワーで頑張る風土を変えてきました。役割を明確にする、決められた時間内で努力する、そのために使いづらくて時間がかかり過ぎる業務システムを見直すなど対策を取りました。

ホームページで、薬王堂は「当たり前」のことを徹底しているとうたっていますが、サービスも過剰なことをしていないか見直し、整理もしました。その結果、人件費のコスト削減を実現しました。10年経って振り返ると、会社の雰囲気も明るくなったと感じています。

――働き方改革はご苦労もあったでしょうね。他にはどんな施策を実施されているのですか。

西郷常務 「Everyday Same Low Price戦略」という売れ筋の商品を常に低価格で販売することで、お客様に安心してお買い物をしていただいています。数値目標は、既存店の売上高前年比を103%、粗利率を23%で安定させて、販管費比率を19%にすることで、営業利益を4%に設定しています。

この数値目標をクリアしないと、東北ではなかなかビジネスを継続させることができません。もちろん、大手ドラッグストアのように店舗数が500店以上もあれば、ここまでシビアに販管費コントロールをしなくても商売が成り立つと思います。でも、実際問題、私たちが出店しているエリアに他のドラッグストアが参入してきても、すぐに立ち行かなくなって撤退してしまいます。

東北にこだわり、その社会課題に立ち向かう

――売上構成を見ると、食品が40%を占めています。まさにコンビニエンス・ドラッグストアですね。


西郷常務 東北地方では、店主の高齢化で店じまいをする個人経営の小売店が少なくありません。かといって、大手ショッピングセンターは採算が取りにくいため進出してきませんので、食品をはじめとする生活必需品を買いたいと思っても、近くにお店自体がないという問題を抱えているところがあります。いわゆる買い物難民が急増しているのです。そのうえ消費者の高齢化が進んでいます。

こうしたお客様の抱える課題を解決するために、私たちは小商圏でも商売を続けられるノウハウを蓄積し、さまざまな種類の生活必需品を、安い価格で店舗に並べられるビジネスモデルを構築しました。私たちが実践しているフォーマットであれば、小さい商圏でも生き残っていけますし、競合他社が手を出せないような場所にも出店することができます。そこが、私たちの強みといってもよいかも知れません。

 

――東北以外の地域へは出店は考えていないのですか。

西郷常務 まだしばらくは東北地方にこだわりたいと思います。もうこれ以上は出店する余地がないというところまでは行きたいですね。でも、それは5年先、10年先のことかというと、そうではないと考えています。5年以内には、東北地方以外の地域に進出する可能性があります。

これから5年先の日本を見据えると、恐らく今の東北地方と同じように、人口減少によって起こるさまざまな社会課題に直面する地域がもっと増えると思います。そういう地域で、私たちが東北地方で積み上げてきた店舗運営のノウハウを活用して、そうした課題を解決していくことができると考えています。

――企業としては、人口減少社会の日本で今後の成長戦略をどう描いているのでしょうか。

西郷常務 正直なところを申し上げると、日本の人口が減少していますから、小売業の売上だけで成長させるのは極めて困難だと認識しています。ドラッグストア業界でも、M&Aによる再編が活発に行われているのですが、私たちとしてはM&Aで売上を拡大するのは本意ではありません。とはいえ、このまま手をこまぬいていては成長できなくなるので、他のドラッグストアがやっていないこと、できないことに取り組んで、それを次の成長の起爆剤にしたいと考えています。

そのひとつが「店舗のメディア化」です。このように言うと、店頭にデジタルサイネージを設置して、そこに商品情報を流して販促に用いるのかとイメージする方が多いのですが違います(笑)。

では、どういうことかと言うと、薬王堂に来店されるお客様の購買情報、あるいはニーズなどのデータを収集し、ビッグデータ解析を行っています。2019年に設立したMedica株式会社(メディカ:西郷常務が代表取締役を兼務)が企業と連携し、お客様が望んでいるサービスや商品を開発しています。

大志を抱きユニークな未来を模索中

――すでに形になっているサービスや商品はあるのですか。

西郷常務 地域の方が薬王堂の店舗で健康管理ができる『KOMPASU』というサービスを2021年8月にリリースしました。検査キットを使って検体採取していただくと、その結果をアプリで確認、管理ができるというサービスです。

また、薬王堂のアプリに肌診断機能を付加し、その診断結果をもとに、似た肌状態を持つユーザーが使用して、肌状態数値が良くなった化粧品をレコメンドするというサービスも行っています。

SDGs的な商品の取り組みとしては、東北の未利用資源を用いた、肌にも地球環境にも優しい化粧品『and OHU(アンオフ)』を奥州市の企業と共同開発して、2021年12月から販売しています。エコ商品の販売もしていますが、これをお客様に選んでいただくことで「お客様と一緒にできるSDGs」と考えています。

こうした活動をしているので、社会課題を解決するためにベンチャー企業を起こした若者から、日々、たくさんのアイデアが寄せられています。薬王堂というリアル店舗があることが彼らにとっての魅力なんですね。現状、10本くらいのプロジェクトが同時進行しています。毎日がすごく楽しいですよ。一緒に働くメンバーは、多分とっくの昔に自分たちが小売業の社員であることを忘れていますね(笑)。目的意識を持って取り組んでいるし、側で見ていてすごく成長しているという実感があります。私は彼らに対して「我々は社会課題解決実装集団なんだと思っていこう」と言っています。

 

――「東北から世界の健康をデザインする」というニュービジョンを掲げていますね。どういう意味が込められているのですか。

西郷常務 東北地方は人口減少が進んでいる課題先進地域です。だからこそ、この東北で先進的、革新的なプロダクトやサービスを実装させ、成功事例をどんどん増やし続けて、「東北でこんなことができた」という情報を世界中に発信し続けたいと思います。

今後は日本と同様に、人口減少社会に移っていく国が増えてきます。13億人の人口を持つ中国でさえ、一人っ子政策の影響で急激に社会の高齢化が進み、人口減少国に転じます。先進国の多くがそうなるのであれば、私たちが今、東北地方で取り組んでいることが世界のスタンダードになるかも知れない。そういう心意気が、ニュービジョンに込められているのです。

――現在、策定中の中期経営計画は何を柱にするのですか。

西郷常務 これまで申し上げたことのまとめになりますが、東北地方に根差して出店を加速させ、ベンチャー企業との協業を通じて新しいビジネスを立ち上げていくことが、中期経営計画の柱になります。

薬王堂に入社してから、私はさまざまな改革に取り組んできました。その成果のひとつと言ってもよいかも知れませんが、東京の大学生が薬王堂でインターンをしたいとか、スタートアップ企業の経営者が薬王堂で働きたいと言ってくれるようになったのです。これは薬王堂のユニークさが、東北限定のものではなく、いよいよ日本に、世界に広がり始める前兆ではないかと自負しています。

株式会社薬王堂ホールディングス


コード  :7679
本店所在地:岩手県盛岡市
上場日  :2019/09/02
https://www.yakuodo-hd.co.jp/

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